母は生前、よく私と娘を連れて海外旅行したいといっていました。彼女は何故、私たち三人で旅行したかったのでしょう。
今となっては知る手立てもなく、想像するしかないのですが、いろいろ話したかったのかもしれません。自分と娘と孫という立場ではなく、ただの女性三人として。自分の人生とか、夫の悪口とか、もっと他愛のないこととか。そういうことを、男抜きで話したかったのかもしれません。
もし今、母が突然この世に蘇り、私と会ったとしたら、彼女はなにを私に話したいと思うでしょう。この問いの答えは、すぐに頭に思い浮かびました。
「みか、私の人生はこれでよかったのかな。なかなかよかったよね。どう思う?」
そしたら私は、こう答えます。
「すごくよかったよ、最高だったよ、自分でもそう思うでしょう?」
たぶん母はハハハと笑って「そうよね、私みたいな生き方ができる人は、なかなかおらんよね」と言うでしょう。
母は、自分でそう思うだけじゃなく、私にも認めてほしかったんじゃないかと思います。自分に自信がないわけではないんだけれど、娘から見たらどうかしら、どんな風に見えたかしらと、そういうことを気にするようなところがありました。
鏡に向かって歯を磨きながら、そんなことを考えました。私もいつか、娘や孫と一緒に旅行をしたいと思うかしら。
写真は、若かりし日の母。ここがどこなのか、彼女はどんな気分だったのかわからないけど、なんだか幸せそうです。私は父親似で、母とはあまり似ていません。彼女に似たかったなあと思います。