今夜は、彼女のためだけに

親友の定義ってわからないけれど、
もし「あなたの親友は?」と聞かれたら
そのときは、彼女の名前を言うと決めていた。

大学のとき、まさに一目惚れで。
とにかく、彼女のことが気に入ってしょうがなくて。
いつの間にか、無二の遊び仲間になり。

そんな彼女が結婚したときは
私、スピーチのときに大泣きしたっけなあ。
なんだか、感無量で。
そんなことは、あとにも先にもそれっきりだったんだけど。

新潟で暮らす彼女が、いつものほほんとした様子で
「みかちゃ~ん」って電話してきたりすると
ああ、こいつだけは変わらないと思って安心してた。

そんな彼女から、さっき電話がかかってきた。

「みかちゃん、今いい?」
「うんうん、どうしたの?」
「あのね、大変なことがあったの」
「え、なに?」
「昨日の夜ね、旦那が死んじゃったの」

あまり感情を表さない彼女が
電話のむこうで、鼻声になっていた。

「突然のことで、どうしていいかわからなくて。
マッサージとかしてみたんだけど
もう腕も足も青くなっていて」

お風呂の中で死んでいたご主人にむかって
混乱しながらも、必死で取り戻そうとしていた
彼女の姿を思うだけで、もうたまらなくて。

私たちは、電話のあちら側とこちら側で
ただぐしゅぐしゅと、言葉を詰まらせていた。

ああ、情けない。こんなときに、こんな遠くにいて、
あの子に、なにもしてあげられなくて。

 inouemica.work © 2018. All Rights Reserved.