井上円了哲学塾を卒業する際、東洋大学から「国際井上円了学会」を紹介された。参加資格も特にないようなので、なんでも経験と思い、参加を申し込んでみた。しかし、実際にそこで何をするのかは全然わかっていなかった。
先日、登録したメールアドレスに以下のメールが届いたので、これも試しに参加してみることにした。
国際井上円了学会の運営母体である、
国際哲学研究センター第1ユニットの研究会のお知らせをいたしま す。
国際哲学研究センター客員研究員の西村玲氏を迎えて、下記の要領で研究会を開催いたします。聴講無料、事前申込不要ですので、どうぞ奮ってご参加ください。
題目:釈迦仏からゴータマ・ブッダへ――釈迦信仰の思想史
日時:2015年1月14日(水) 16:30~18:00
場所:東洋大学白山キャンパス2号館3階第1会議室
講演者:西村玲客員研究員(公益財団法人中村元東方研究所専任研究員)
概要:日本近代仏教におけるインドとブッダへの憧憬は、どこから生まれてきたか。 近代のブッダ観の源流となった釈迦信仰の発生と展開を、 日本の戒律運動の歴史からたどる。 中世南都に端を発する釈迦信仰は、 江戸時代には大乗非仏説と連動しながら展開し、 近代に輸入されたヨーロッパのインド学に接続して、 現代日本の仏教学にいたる。釈迦仏はいかにしてゴータマ・ ブッダになったのか――釈迦信仰の思想史を考察する。
*聴講無料・申込不要
ただ漠然と「哲学塾の公開講座のようなものかな」と思っていたが、行ってみると全く違っていた。会場は、授業に使うようなこじんまりとした部屋で、参加者は約30名。見回してみると、年齢的にはかなりご高齢の方が多く、なかには袈裟をきた僧侶の姿も。ちなみに、いつもはもっと参加者が少ないらしく、運営側が「今日は参加者が多く、資料が足りないので増刷してきます」と慌てていた。
西村玲さんという方、私は不勉強でよく存じ上げていなかったが、公益財団法人中村元東方研究所の研究員で、ご専門は日本思想史。そのため、発表内容も非常に歴史解説寄りだった。資料の内容はとても詳細で、しかも本編と言葉の意味解説編の2つご用意されていて、丁寧なお仕事ぶりに大変感銘を受けた。お話もわかりやすく、私のように不勉強な人間でも、なんとか理解できるように説明されていた。なかでも、最後に紹介された中村元氏の言葉、
歴史的人間としてのゴータマ・ブッダが、やはり生まれて、生きて、そして死んだ人間でありながら、「人間」を超えていたところに、われわれはその偉大さとありがたみを覚えるのではなかろうか(学問の開拓)
には深く感銘を受けた。釈迦を仏とあがめていた時代もあったようだが、今は釈迦を一人の人間、あるいは思想家として研究されていることが増えているようだ。私自身も、たしかに釈迦をそのようにとらえているように思う。
発表のあと、質問時間が設けられた。質問されたのは、参加者が2名、運営スタッフから1名。質問内容は、非常に鋭いというか、ややもすると攻撃的にも受け取れるような内容で、カフェとはかなり違っているという印象を受けた。なるほど、ここに参加しているのは、皆、研究者で、カフェにおけるゲスト講師と参加者とは、少し立場が違うのだ…というのが、私の解釈。本当にそうなのかどうかは、定かではないが。