【100分de名著】金閣寺

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↑こちらは、「いらすとや」さんが描いた、とてもかわいい金閣寺のイラスト。

 

スーパームーンの皆既月食が見られなかったので、NHKオンデマンドで「100分de名著」の「金閣寺」を視聴。ゲストは平野啓一郎さんだった。

 私はこの本を読んだことがなかったので、この番組でお初にお目にかかることになった。だから、1950年7月に実際に起きた「金閣寺放火事件」をモチーフに書かれた作品だということも知らなかった。

番組HPの解説に書かれていたあらすじは、以下の通り。

舞台は戦前から終戦直後の京都府。成生岬にある貧しい僧侶の家で生まれた溝口は、幼い頃から吃音に悩まされる感受性の強い少年。父親から「金閣寺ほど美しいものは地上にはない」と聞かされ続け、美しい景色をみては金閣寺への憧憬をつのららせて、いつしか自らの劣等感を忘れさせてくれる存在に。やがて金閣寺の徒弟となり得度した溝口は、戦争の中で金閣寺とともに滅んでいくことを夢みるようになりました。しかし敗戦が、溝口と金閣寺の関係を決定的に変えてしまいました。戦時中は「滅びゆくもの」として自分と同じ側にあったと思われた金閣寺は、自分からかけはなれた「呪わしい永遠」と化したのです。師である住職との関係、友人たちからの影響、女性との遍歴の中で深い挫折感を味わった溝口は、ついに金閣寺を憎むようになり、「金閣寺を焼かなければならぬ」と決意するに至ります。果たして、金閣寺放火に至った彼の心境の裏には何があったのでしょうか?

名著109「金閣寺」:100分 de 名著 より

 ごく私的な感想だが、溝口の感覚はわからなくもない。だからこそ、見ていてじれったいような、腹が立つようなところが色々とあった。

共滅願望は誰もが抱えている甘い誘惑であり、もっと辛辣にいえば、一番かんたんな逃げ道でもある。だから、そのイメージに魅了され惹きつけられるのは、珍しいことではない。そのギリギリのところ、物語でいうところの、金閣寺に火を点ける寸前に溝口が究極の美を感じて「もう行為をしたのと同じ」というところで引き返す道を選べばよいのに、と悔しかった。踏みとどまることさえできれば認識が変わり、そのあと、違う世界が開けるのに。だから「世界を変えるには認識を変えるしかない」という柏木の言葉に強く共感するし、私が哲学に惹かれる理由はそこにある。

もうひとつ、滅びると知ったときに美しいと感じるというのであれば、すべての人、すべてのものは滅びる運命にあるということさえ分かればよかった。昨年8月に亡くなった水城ゆうさんは、生前「自分の余命が一年と聞いた後、世界がとても美しく見えた」といっていた。つまり、そういうことなのだ。

 

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