「ディザインズ」(五十嵐大介)

 

「ディザインズ」読了。漫勉で描かれていた作品である。

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後半部分で描かれていたシーンはこちら。

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描いている映像とあわせてみると、ちょっと面白い。この番組を見てわかったのは、五十嵐さんが風景を描きたかったということ。風景というか、空気なのかな? そこにこだわりがあるから「風景を描きたいが故の漫画家なので、風景を(アシスタントに)渡すぐらいならキャラクターを渡す」という。……なんてことをいいながら、この表情である。キャラクターにもしっかりこだわっているんじゃないの?

私が「ディザインズ」の1巻目を購入したのは、番組を見た後だったから、多分2016年3月頃。それから5年経った昨日、残りの4巻を購入して読破したら、いやあ、すごかった! こんなすごい話だったのかと驚いた。といっても、ちゃんと理解したわけじゃない。きっと一回読んだだけじゃ、内容をちゃんと理解することはできない。ということで、今朝起きて再読し、やっと半分ぐらい理解できたかな?という感触を得た。

メインの登場人物は、遺伝子操作で生まれた(生み出された)半獣半人たち。ウィキペディアの解説によると「戦闘に特化するようデザインされ、サンモント社によって紛争地域に投入される」存在だそうだ。各巻の表紙には、彼らの姿がある。主人公は、クーベルチュールという蛙のHA(ヒューマナイズドアニマル)。蛙なんて弱そうだけど、この主人公はめっぽう強い。このシーンで戯れている相手は幼なじみのヒョウのHAだが、互角というより蛙のほうが強いぐらいだ。そういう意味では、ハイブリッドされた基の種とはかなり違うようにも見えるが、そうではない。基の種が持っている「環世界」はしっかり引き継がれているから、世界を感知するセンサーが違う、故に世界の姿が全く違ってくる。その違いをちゃんと描き込んでいるというところに、この作品のすごさがある。

たとえば蛙は「両生類の皮膚を持つ」ため「全身が鼓膜で覆われているようなもの」。象徴的なのは、シャワーを浴びるシーン。クーベルチュールはシャワーで水を浴びているとき、遠くで起きていることや、過去に起きたことなどがありありと感じている。彼女の周りには生きているものと亡くなっているものが等しく存在し、それに対して特になにか思いもないように見える。

これまでの半獣半人を題材にした作品は、ともすると「異形の悲しさ」を表現してしまいがちだが、この「ディザインズ」にはそういった表現は全くなく、どのHAも淡々と自分の環世界の中で命を生きている。そこにリアリズムを感じる。

HAは半獣半人なのでパッと見ると不気味にも見えるが、動きや表情には美しさやエレガントさがあり、だんだん魅力的に見えてくるのが不思議。五十嵐大介さんは、番組の中で「マンガを描くことで自然の素晴らしさを伝えたい、分かち合いたい」と言っていたが、その試みは成功しているように思う。

 

 

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