七五三の着物にまつわるミステリー

七五三の季節である。最近は撮影だけ着物をレンタルするという人が多いようだが、息子の子供は、お嫁さんが三才のときに着た着物がきれいに残っていたので、それを着て写真を撮ったようだ。娘の子供はどうするのか聞いてみたところ「スタジオで撮影するときにレンタルする」とのことだった。

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この写真は、私が成人式で着た晴着。私の母が張り切って用意したものだ。たしか、結婚式のお色直しでもこれを着た覚えがある。母はことのほかこの晴着が気に入っていたようで「あなたの娘にもぜひこれを着せなさい」というので、娘の成人式にもこの着物を着せて写真を写した。撮影の時は、わざわざ熊本から東京に出てきて、娘の晴れ姿を見ながら「きれいだねえ、本当によく似合うねえ」と目を細めていた。

その息子や娘も大人になり、結婚して親になった。ひ孫の誕生をとても喜んだ私の母は、「ひ孫が七五三のときに着るかもしれないから、仕立て直しておく」といってこの晴着を洗い張りに出した。その後、母は脳出血で倒れ、洗い張りから戻ってきたときは、すでにあの世に旅立っていた。だから今も、この着物はそのまま保存されている。

せっかくだから母の希望を叶えてやりたいと思い、久しぶりにこの着物を出して眺めてみた。少しクラシックな柄だが、どことなく上品で、なかなかセンスがいい。3才には間に合わなかったが、せめて7才のときに着られるように仕立てに出しておこうと思った。

そこでふと不思議なことに気がついた。彼女が倒れる前、ひ孫は3人だったが、すべて男の子だった。そして彼女が亡くなったあと、立て続けに女の子が2人、生まれた。まだ女の子のひ孫がいなかったのに、なぜ彼女は晴着を洗い張りに出したのだろう。結果的には、彼女の思惑通り、この晴着を七五三の着物に仕立て直すことになったが、なぜそうなることを彼女は見越していたのだろう。あるいは、この着物にかけた彼女の思いが、ふたりの女の子をこの世に誕生させたのか……。

 

 

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